タイ映画(I)
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愛なんていらない
(イット・ゲッツ・ベター)
(イット・ゲッツ・ベター/マイ・ダイ・コー・ハイ・マー・ラック)
< It Gets Better >


愛とは自然な感情、人ならだれもが望むもの
[製作国] タイ [原題] ไม่ได้ขอให้มารัก
[製作年] 2012年
(2月14日公開)
[日本公開年] 2013年(映画祭)
[監督] タンワーリン・スカピシット(コーフ)<Tanwarin Sukkhapisit/ธัญญ์วาริน สุขะพิสิษฐ์(กอล์ฟ)> [出演者] ペンパック・シリクン(ターイ)<Penpak Sirikul/เพ็ญพักตร์ ศิริกุล(ต่าย)>、パーヌポン・ウォラエークシリ(サーリム)<Panupong Waraakesiri/ภาณุพงศ์ วราเอกศิริ(ซาหริ่ม)>、パーウィット・サップルンロート(ニック)<Pavich Suprungroj/พาวิช ทรัพย์รุ่งโรจน์(นิค)>、パラマ・イモノータイ(パンチャン)<Kawin Imanothai/ปรมะ อิ่มอโนทัย(กวิน อิ่มอโนทัย/ปั่นจั่น)>、ナンティター・カムピラーノン(ベン・ナンティター/ベル・ナンティター/ベン/ベル)<Nuntita Khampiranon(Belle Nuntita)/นันทิตา ฆัมภิรานนท์(เบลล์ นันทิตา/เบลล์)>、クリッサタチャーポン・タナナラー(アー)<Kisthachapon Thananara/กฤษตฌาพนธ์ ธนะนารา(อาร์)>、プリムプラット・チャイヤカム(ルークパット)<Luk Pad/ปุริมปรัชญ์ ไชยะคำ(ลูกปัด)>、パーウィニー・ウィリヤチャイキット(ミン)<Pawinee Wiriyachaikit/ภาวิณี วิริยะชัยกิจ(มิลค์)>、ピンヤーパット・ブンルアン(プペ)
[評価] ★★★★★
It Gets Better (2012) on IMDb
※タイでDVD(英語字幕なし)が発売
 第三の性を扱ったドラマ。自身がトランスジェンダー(Transgender)であることに苦しみながら、自分の生きる道を探すトランスジェンダーたち。また、その両親や子供たちも同じく苦悩する。もう50歳になろうかというニューハーフのサーイターン(ターイ)。彼女は北部の寒村で、若い男性のファイ(パンチャン)と恋仲になる。女っ気のある少年ディン(ニック)は、心配した父親に寺院へ連れて行かれ出家させられてしまう。青年トンマイ(サーリム)は、死んだ父親が所有していたパタヤーのキャバレーの店を処分するためにアメリカから帰国した。そこで美しいニューハーフのドークマイ(ルークパット)や一夜を共にしたトンリウ(ベル)らと出会い・・・というストーリー。
 M Pictures作品。よくありがちな、軽いタッチのオカマさん映画とは全く違う。とにかく、タイ映画らしからぬ脚本が素晴らしい。作品は、三つのストーリー(「サーイターン」「ディン」「トンマイ」のストーリー)が交錯して進行していく。つまり、変形オムニバス作品のような感じだ。この三つのストーリーが混ざって進むので、観客としては最初は何が何だか分からない。しかし、作品が進むにつれ、これが見事なまでに結実していく。ここが、この作品の最大の見どころだ。
 登場人物が多いのだが、全員が見ごたえのある演技を見せてくれている。おそらく、出演者のほとんどはそれほど演技経験はない。その中でベテランが一人いる。主役のサーイターンを演じたペンパック・シリクン(ターイ)がそうだ。この人は、タイの有名な女優で(ちなみに、作品中ではニューハーフの役を演じているが、生まれながらの女性なのでお間違えのなきよう)モデルでもある。若い頃には歌手もやっており(その後も続けているのかもしれないが)、CDも出している。彼女の演技は光っていたが、実はセクシー女優として名が通っている。若かりし頃は、かなり大胆な格好でグラビアを飾っていた。世間からは、相当批判されたに違いない。セクシー女優(正確にはセクシー・モデル)としては50歳を超えてもまだ健在で、その妖艶な肢体を雑誌グラビア等で飾っている。
 トンマイを演じたサーリム、ディンを演じた映画初出演のニックも良かった。サーイターンの若き恋人役を演じたパラマ・イモノータイ(パンチャン)は、2012年度のスパンナホン賞でみごと助演男優賞を獲得している。
 トンマイが心ひかれるニューハーフの役で登場するナンティター・カムピラーノン(ベル)は、TVのタレント発掘番組「Thailand's Got Talent」出身のトランスジェンダー歌手だ。女性と男性の声色を使い分けることができ、歌唱力もある。彼女?は、これが映画初出演(正確には本作と同年のタイ公開作品でに日本でも公開された「ゴースト・フライト407便(407 Dark Flight)」があるので、どちらがデビュー作なのかは分からないが)。サーリムとのかなり濃厚なキス・シーンもある。タイ映画で、ここまですごいキス・シーンは珍しい。彼女は、主題歌「マイ・ダイ・コー・ハイ・マー・ラック(ไม่ได้ขอให้มารัก)」も歌っている。作品中では、クライマックス近く、キャバレーの舞台に登場して歌っているのがこの曲だ。キャバレーでは口パクで歌うのだが、この歌自体は彼女の持ち歌で歌声も彼女のものである。歌の出だしは女性の声で、後半、男性の声色に変わることにご注目あれ。
 実は、もう一人「Thailand's Got Talent」出身者がいる。ドークマイ役のルークパットがそうだ。この人はかなりの美形だ。胸の形が少々作りものっぽいが、なかなかの美人。確認は取れていないが、この方、パタヤーのキャバレーで実際に踊っていたそうな。
 本作は、第22回スパンナホン賞の助演男優賞(パラマ・イモノータイ)、美術賞、衣装デザイン賞を受賞している。作品賞にもノミネートされたが、「ホーム(Home)」に持って行かれてしまった。スパンナホン賞以外でも、数々の賞を受賞している。
 年齢制限は「15歳超視聴可」。タイのエンターテイメント・サイトSiam Zoneのユーザー評価では、9.48点(満点は10点。投票数50。2012年6月現在)であった。この手の作品には熱烈なファンがいて得点を引き上げている可能性があるが、かなりの高得点といえる。興行的には、興行収入US$227,000と沈んでしまった。
 英題でもある「イット・ゲッツ・ベター(It Gets Better)」は、「良いときはきっと来る」というような意味だ。ゲイであることを理由にいじめを受けたり、ゲイではないかと同級生に疑われて自殺をする青少年が続出したために、それを防ぐことを目的にアメリカの作家ダン・サベージ(Dan Savage)が始めたプロジェクト名とかけているようだ。原題は、直訳すると「愛を望むことができない」というような感じになる。
 タンワーリン・スカピシット監督には、「ハック・ナ サーラカーム(Hug Na Sarakham)」<2011年>、「ターイ・ホーン(Tai Hong)」<2010年>、「イン・ザ・ネーム・オブ・シン(In the Name of Sin)」<2006年>などの作品がある。この人は、トランスジェンダーらしい。日本では、第4回アジアンクィア映画祭で上映。

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ポスター

【 種明かしと脚本、ストーリー 】 ※完全ネタバレあり
【ストーリー】
 ストーリーを作中の順番ではなく、時系列で解説すると以下のようになります。ディンは、少年期に女性の服を着て踊っているところを父親に見られてします。そのことを心配した父親に、ディンは半強制的に出家させられてしまう。しかし、出家はしてみたものの、寺では指導役の若い僧(クリッサタチャーポン・タナナラー)に恋心を抱いてしまう。還俗して女性と結婚するが、妻の妊娠中に妻の服を着て踊っているところを見られてしまう。妻は彼と別れ、アメリカへ渡り一人で子どもを育てることに。
 その後、彼は性転換手術を施し名前(ニックネーム)もサーイターンと変え、ニューハーフとして生きていく道を選んだ。そして、パタヤーでキャバレー・ショーの店を開き成功する。遠い昔に勘当された父を一目見ようと、タイ北部に住む父の元へと出かけて行く。父と再会するが、父は女性の姿をしたサーイターンが自分の息子だとは気付かない。そこで、自分をニューハーフと知りながらも愛してくれる若い男性ファイと出会う。ある日、サーイターンは父が強盗に襲われている場面に出くわし、父を救おうとして殺されてしまう。
 キャバレーのオーナーであるサーイターンが死んでしまったため、別れた妻が育てた留学中の息子トンマイが店を処分するために帰国する。しかし、店へ行ってみると、疑問を持ちながらもニューハーフのトンリウに心揺らぐ自分に気付く。そして、店は・・・。
 つまり、少年僧のディンが成長した姿が、サーイターンだ。この二人は同一人物。そしてサーイターンの息子がトンマイなのだ。ようするに、この作品のストーリーは全てつながっていてひとつのものなのである。
 この作品、推理小説のようなストーリー展開で観ている者を魅了するのだが、ひとつ間違うと理解できない部分が出てきてしまう。最初、性のマイノリティーに関する三組のオムニバス・ラブ・ストーリーかと思ったら、そうではなかった。全体がひとつの物語だったのだ。この作品のすごいところは、このストーリー構成のみごとさにある。最後の方で、なるほどこういうことだったのかと分かるのだが、それまでが分かるようでわからない。
 しかも、ストーリーは時系列通りには描かれていない。そのために観ている者に混乱が起こるのだが、それがこの作品の最大の魅力でもある。それに加え、実際には絶対にあり得ない部分が描かれている。そのひとつは、タイ北部の村にある寺院の本堂の入口で、サーイターンと出家したディンとがすれ違うシーンがある。もちろん、これはあり得ない。なぜなら、サーイターンとディンは同一人物なのだから。そして二つ目。パタヤーのバーでトンマイがグラスを傾けていると、そこにサーイターンがやって来る。トンマイが「美しい人ですね」というと、サーイターンは「ありがとう。でも、私はニューハーフよ」というシーンがある。トンマイがパタヤーに来た時には、すでにサーイターンは死んでしまっているのでこれもあり得ない。そして更に、サーイターンはニューハーフということになっているが、実際に演じているターイは生まれながらの女性なのでここでも混乱が起こってしまうかもしれない。
 ストーリー展開だけでなく、セリフもなかなかしゃれている。トンリウがレストランで座っていると、胸の部分が大きく開いたドレスでドークマイがやって来る。彼が彼女の胸元に見とれていると、ウエイターがやって来る。そしてコーヒーを注文すると、ウエイターはトンリウに「ミルクは必要ですか?」とたずねる。トンリウはうろたえて「必要です」と答える。日本語の字幕にしてしまうとまったく分からないのだが、タイ語ではミルクのことも乳房のことも「ノム(นม)」というのだ。おそらく、タイ人ならここで思わず笑ってしまうに違いない。
 そして、ディンが女性の服を着て踊っているところを父親に見つかってしまうシーンと、彼が成長して結婚し、妻が妊娠している時にやはり女性の服を着て踊っているのを見つかった時にまったく同じセリフ「市場へ行ったんじゃなかったの?」「財布を忘れたので・・・」を使っている。これもおもしろい。
 最後の方の雑貨屋が銃を持った強盗に襲われるシーンは、クライマックスであるにもかかわらずかなりあっけなかった。最初はこのシーンは物足りなく思ったのだが、あとであの方が良かったのだと気付く。もしあそこで撃たれたサーイターンの息があり父親と再会のことばを交わしていたら、かえって薄っぺらな内容になってしまっていたであろう。あそこで、父親を救おうと現れたサーイターンの姿を見た父親が「ディンやめろ」と叫ぶのは感動的だ。あのひとことのセリフだけで、父親はサーイターンが自分の息子のディンであることに気が付いていたことを知らしめている。

【 It Gets Better 】
DVD (タイ版)
【 It Gets Better 】
VCD (タイ版)
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ナンティター・カムピラーノン
< (C) Bell Nuntita Official Site >


International Trailer



Trailer



กระแสแรง โดนใจ



MV 「マイ・ダイ・コー・ハイ・マー・ラック(ไม่ได้ขอให้มารัก)」
Sung by Belle Nuntita



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